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下肥運び

 春の最初の農作業はジャガイモの植え付けである。雪が消えるのを待って、時によっては宮の裏から上がってゆく坂道の残雪をスコップで開けて、軽トラックで元肥にする下肥を運ぶ。
 屎尿は良質の肥料であることは誰でも知っているが、いまや農家でも水洗トイレが普及しているから、里(平野部)では下水道にこの良質の肥料を水に流して捨てている(しかも、おカネをかけて!)。山間地でも合併処理などの水洗化が進んでいる。
 私は20数年前にこの家を入手して殆ど自力で改修したのだが、普通の汲み取り式であった便所の改造については、農業雑誌(都市生活者であったときも愛読者だった)で知っていた「サイコン」という名称のコンポスト便所装置を取り付けた。
 原理は、屎尿に何か独特の微生物を添加してあるとかいう「おがくず」を投入して、螺旋状の攪拌装置で混ぜて発酵処理するというものである。
 螺旋構造の攪拌装置はタイマーで制御されていて、一日に一度ないし数度回転して攪拌し、一度だけ(夜中に設定してある)逆回転して混ぜた屎尿を外のタンク(便槽)に搔き出す。タンクには排気筒と電動のファンが取り付けてある。
 臭いもせず良質のコンポスト肥料ができるという触れ込みであった。たしかに、昔ながらの「ぼっとん便所」に比べると、使用感もそれほど悪くないし、下肥の利用という点についても、いったん野壷のような「中間発酵設備」に蓄える必要もないから、合理的な設備である。
 わが家では重宝しているが、残念なことに世間の流れは農村といえども「水洗トイレという文明生活」の方に圧倒的に向いているようで、この装置を製造しているメーカー自体が行き詰まって潰れてしまったらしい。
 当地の友人たちもこの「すぐれもの」を見て何人かが設置しようとしたが、既に代理店も撤退しメーカーとも連絡が取れない状態で残念がっていた。
 メーカーが潰れて特製の微生物入りのおがくずは入手できなくなったが、知り合いの木工所から広葉樹のおがくずを貰って来て、それに自家製の粉炭(木酢液入り)を混ぜて(自動投入装置が壊れてからは)ヒシャクで直接投入するという簡便な方法で運転を続けてきた。
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 写真の「S」のマークがついているのがおがくずを入れておくタンクで、この便所内のボタンを押すとモーターで便器の下に所要量のおがくずが投入される。いまは使っていない。右側が便槽の開口部。フタをあけてヒシャクで汲み取っている。便槽は720リッターの容量。5〜6人家族で3〜4ヶ月で満タンになる計算だという。
 冬の間に溜まった下肥はそっくり畑でジャガイモの元肥になる。下肥のある分だけのジャガイモの作付けができるというわけである。「入るを計って出るを制す」ならぬ、「出るを計ってイモを作す」である(笑)。
 下肥桶や密閉タンクなどを総動員してトラックで畑まで上げ、そのあとは一輪車に積み替えて畝のところまで運ぶ。結構な力仕事で、冬の間に鈍った体のウオーミングアップでもある。
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 どうかすると4月にずれ込むこともある作業なのであるが、少雪のせいで、彼岸頃にはトラクターで畑を起こすという早回りの年になった。
 あちこちで盛んに啼き始めたウグイスなどの野鳥の声を聞きながらの半日の作業である。
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 溝に下肥を入れ終えた畑。軽く土を覆っておき、後日ジャガイモの種芋を適当な大きさに切って植え付けてゆく。
 というわけで、生ごみも屎尿も、わが家では貴重な有機肥料になる。
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by sumiyakist | 2009-03-25 13:30 | 自然と暮らし