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里山の更新

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 前回見た伐採の様子は、一見いささか荒っぽい伐り出し方なので、素朴な自然愛好家には抵抗があるかもしれないが、チップ業者氏は里山の本来的な利用法の枠からはみ出しているわけではなく、(原理的には)自然破壊をしているわけではない。
 上の写真は村の後背地の山で別のチップ業者氏が伐採している現場だ。これもやはり、重機で道を付け、キャタピラの運搬機で搬出するという方法である。左手の向こうに見える山が松尾の尾根の最頂部である。
 かつて薪や炭の原料の木を伐り出していた雑木林は、まさにその用途から「薪炭林(しんたんりん)」と呼ばれたり、あるいはまた、人の手のはいらない原生林や自然林(天然林)が一次林といわれるのに対して二次林といわれる。いわゆる里山であり、それは人が木を伐り出して利用することで植生が維持されてきた。このあたりではコナラを中心とする広葉樹の森林である。雑木の林は、伐っても25年〜30年でほぼ元通りに再生する。その一局面は以前にも載せた。
 少し前ならこうして雑木林を伐採(皆伐)してその跡に杉や檜の針葉樹を植林したのであるが、そうなるともう雑木林として再生することはない。(公共事業としての針葉樹の植林は「緑の森林破壊」と悪口をいわれたこともある。)チップ材として伐採してその跡を放置するだけなら、作業道などの工事によるいくらかの変容はあるにしても、多分、25〜30年経てばほぼ元通り再生するだろう。チップ伐採があながちに自然破壊でないというのはそういうわけである。
 ところで、念のために述べておくが、このあたりの山は殆ど民有林であり、勝手に木を伐るわけにはいかない。チップ業者氏にしても私にしても山林地主に代金を払って木を買い取っているのである。
  伐採しないで放置すると雑木林も老化する。ナラなどは、生えている木のそれぞれが太くなるのではなく、淘汰されて本数が減り少数の太い老木の山になってゆく。他の雑木もほぼ同様である。キノコも出なくなる。あるいは、フジなどの蔓性の植物が繁茂して山を覆ってしまうこともある。里山は人間の手が入ってあるサイクルで伐ってやることで植生が維持されているのである。それを更新といっている。
 私の炭焼きの原木としての「消費量」くらいでは到底追いつかないから、チップ業者氏は山の活性を維持する更新の役割を果たしているともいえる。ただ、重装備の機械を使うので伐採の速度が猛烈に早く、広大な面積が一時的にはげ山状態になることは問題である。伐採速度(=量)が更新の必要性(=質)の本来を損なうということもありうるからである。
 ちなみに、昔の炭焼きさんは普通1年間で1町歩(1ヘクタール)の山を伐っていたそうだが、現在のチップ業者なら1月もかからずに1町歩の山を伐採するのではないだろうか。久利須村の山は植林事業を免れて比較的広葉樹の森林が多く残っていたのであるが、チップ業者の挟撃を受けてたちまち禿げ山と化しつつある。
 そして、前回述べたように、もしカシナガが伐採によって大挙して未伐採の区域に移ってゆくとすると、ナラ枯れ現象の「濃縮」が行われることになり、困った問題ではある。 
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by sumiyakist | 2007-08-30 09:09 | 自然と暮らし