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元裁判官の内部告発

c0068917_21563178.jpg 運動仲間というか、少し年長の知り合いが、『裁判が日本を変える』(生田暉雄著・日本評論社刊 1470円)という本を送ってくれた。8月に出版された新刊である。
 著者の生田暉雄氏は、15年ほど前に、大阪高裁判事を最後に22年間の裁判官生活にピリオドを打ち弁護士になられた方のようである。本書は、そういう経歴の著者による司法の内部告発とでもいうべきものである。
 ヤメ検の弁護士ならざらにいるし、裁判官から弁護士になるというのも珍しくない。また、日本の裁判の批判の本なら既に相当出版されているからこれもさして珍しいことではない。しかし、元裁判官がこれほどの激しさと緻密な方法論を併せもって日本の裁判を批判するというのは、珍しいことではないだろうか。
 裁判というのは、常識的に考えられているように(著者はそれを「マインドコントロールされている」という)、紛争解決の手段なのではなく、国民主権を実現する手段なのであることを強調する。
 そして、ただ現状を批判するだけでなく、タイトルにあるとおり、現行の法廷のルールを現場から壊してゆくような方法で、裁判を提起してゆくことが日本の「官僚社会主義」を打破する近道であると、呼びかけている。
 180ページあまりの手軽な本であるし、(多分)書き下ろしではなく、既存の論考を集めて一書としたように見えるが、内容は濃い。その柱は3本。「裁判員制度批判」「刑事捜査原論」、そして、「ヒラメ裁判官を生み出す司法制度批判ならびに、それを打破するための行政訴訟の勧め、およびその事例紹介」となっている。 
 導入が決まっている裁判員制度については、簡単明瞭にその問題点を挙げて批判している。それはむしろまやかしの「市民参加」であって現在の「官僚裁判官」による司法支配を永続させるための隠蔽策であるとする。
 なんといっても力点は第3の「国民主権実現の方法としての裁判」にある。そもそも、わが国では行政訴訟が少なすぎるという。ドイツでは年間50万件あるというが、わが国では2000件。こういう数字を示されると、市民の権利意識のレベルの差なのであろうかと、いささか情けなくなる。しかも、その行政訴訟たるや、裁判の仕組みにおいても判決においても、圧倒的に被告である行政側が有利である。その司法制度的な原因、あるいは裁判官の任用(昇給・昇進)から来るわけ、などについて元裁判官の著者ならではの見解が示される。
 生田氏がエライのは、氏の主張するところをを市民の運動として実行するために全力で市民の活動をサポートをしている点だろう。愛媛県での「つくる会」教科書採択に際しての行政の介入に対する裁判をはじめ、「新・教育基本法」違憲訴訟など、18本もの訴訟を、「主権者としての国民が行う裁判」に立脚して、裁判の進め方自体を俎上に上げて改革させつつ実行している。もちろん、原告たちは、生田氏のアドバイスを受けながら本人訴訟でも提訴を行っている。
 愛媛県の活動に触発されて杉並区や同じく「つくる会」教科書を採択した大田原市の市民たちが同様な観点と手法で裁判を行っているのも紹介されている。(杉並区の活動についてはインターネット新聞=JANJANでレポートされていたのを読んで関心を持っていたが、その背景にこういう流れがあったことをはじめて知った。)
 また、本書では触れられていないが、市民派の弁護士が不当逮捕されそうだということで抗議活動がネットで行われたことがあるが、その弁護士というのがこのほんの著者=生田暉雄氏だったのだ。
 なるほど、人権派弁護士として、警察や検察はもとより、裁判所からもにらまれ、マスコミからもバッシングを受けている安田好弘弁護士とならんで、権力にとってもっとも目障りな弁護士であり、活動を抑制するためなら合法非合法を問わずあらゆる方策で押さえ込もうとするのもむべなるかなと理解したしだいである。
 世の中にはエライ人がいるものだ。捨てたものではない。
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by sumiyakist | 2007-09-20 22:08 | 知事退職金

保守王国の精神風土

 最高裁が上告棄却決定をした以上、これで中沖退職金問題は、司法上はケリがついたと言うべきだろう。(しかし、社会的・政治的にはまだ終わったわけではない。)このブログ「行政訴訟をする意味」でも書いたとおり、正直なところ日本の司法を信頼している訳ではないから(青島弁護士は少しがっかりし、大いに怒っているようだが)、私はまったく平静である。

 さて、参院選が終わって、富山県選挙区では民主・社民・国民新の推す森田高氏が当選した。自民党以外が参院選で勝ったのは39年ぶりだそうだ。なにしろ当地は、あの「山が動いた」1989年でさえ、当時全国で27あった一人区で自民党が得たわずか3つの選挙区のひとつであったほどの保守王国である(もちろんそのときも中沖氏が知事であった)。
 私とすれば、この富山県で、退職したとはいえまだ余勢を十分残していた中沖豊という人物を裁判の俎上に乗せただけでも十分な意味があったと考えている。(残念ながら、地方自治法が改悪されたせいで中沖氏自身を被告にすることはできなかったが)。
 その他、副次的な収穫はたくさんあった。明確なところでは、昨年の小矢部市長選挙では「退職金辞退」を公約に掲げる候補が出て勝利したし、(直接的な因果関係は不明ながら)小泉首相が首長退職金が高すぎると発言したり、自民党の会議でもこの問題が取り上げられたりしたことについても、われわれの活動が幾分かは影響を与えていたであろう。

c0068917_21401495.jpg ついでながら、当地の政治風土や選挙に関連して『炭焼小屋から』に収録した古い時評をここに載せておくことも悪くないだろう。これは、1993年7月の総選挙(自民党が敗れて細川内閣が成立することになる)の直前に、地方紙(いまは「県の広報紙」と憎まれ口をいっているが)の求めに応じて寄稿したものである。なんのクレームも付けずに載せてくれた。いまなら考えられないことだ。

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by sumiyakist | 2007-07-31 21:31 | 知事退職金

通知書

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 代理人の青島弁護士のところへ最高裁から送られてきた上告棄却決定の通知書である。上が決定調書、下が別紙(決定内容)である。
 最高裁の中川了滋裁判長以下4人の判事の下した決定であることが分かる。次の総選挙の際の国民審査の参考に、この名前はよく覚えておこう。別紙の理由は、青島弁護士によれば「慣用句」とのこと。
 それよりなにより、青島氏のいう最大の問題点は、上告申し立てからわずかひと月ほどで棄却決定をしてきたことだという。この辺のことは(なにしろ裁判もさほど経験はなく、まして最高裁への上告も初めてのことであるから)、私には評価不能であるが、ふつう、3ヶ月はかかるものだというのである。それなのに、遅いと定評のある日本の裁判進行にもかかわらず、今回だけはまさに電光石火のごとく棄却決定を下してきたという、その態度そのものが司法の意志を示しているというのである。
 市民オンブズ富山の機関紙「オンブズパーソン」の54号(7月28日発行)で青島弁護士は次のように最高裁の決定を批判している。
                       *
 7月20日最高裁は、市民オンブズ小矢部の会員が申し立てていた中沖前知事退職金返還住民訴訟の上告及び上告受理申立について、上告棄却・上告不受理の決定を行いました。1月前の6月18日に最高裁に記録が到着して審理を始めたとみられてから32日。論点の難しさからみて、異常とも言える超スピード決定でした。
 この原因は、控訴審判決があまりに杜撰・非論理的であったため、おりから首長の退職金の高額さに対する批判が自民党の内部からも起きている情勢の中、審理が長引いて市民の関心が高まってくれば、このことが露呈して裁判の権威が落ちることを最高裁がおそれたこと、逆に現時点では県民の関心がたかくないと見られたことにあるのではないかとみます。
(下略)
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by sumiyakist | 2007-07-29 09:14 | 知事退職金

上告不受理! 敗訴決定?

 昨24日夜、出先から帰ってメールチェック。午後3時過ぎに青島弁護士からのメールが入っている。そのまま載せる。
                    *
 昨日上告棄却,上告受理申立不受理の決定がつきました。
 なんと,6月18日最高裁記録到着後1月のスピード決定。
 高裁判決の非論理性についてなんら判断せず,むしろ,そこを指摘したことから逆に早期切り捨ての政治判断をしたのでしょう。
 これまで,最低3ヶ月くらいの審理期間がありました。
 最高裁の政治性を改めて感じさせられました。
 詳しくは次号パーソンに記載します。
                    *
「パーソン」というのは市民オンブズ富山の機関誌のことである。
 これほど早く決定が来ようとは思っていなかったので私も一瞬目を疑ったが、紛れもなくわれわれの敗訴の決定であろうと気を取り直し、オンブズ小矢部のメンバーに連絡を入れ、さらに、青島氏に委細を尋ねる返信メールを出した。
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by sumiyakist | 2007-07-25 19:30 | 知事退職金

市長からの回答

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 受け取らないと公約している市長退職金に対する積み立て(負担金)のことを尋ねた公開質問状に、ちょうど一ヶ月後に文書回答が来た。上がそれである。
 このように、わが小矢部市では、先の大家市長の時もそうであったが、市民からの問いかけに(要求すれば)文書で回答が来るようになった。富山県庁は、いまでも多分、文書回答はしないと思う。以前になんどか文書回答を要求したことがあったが、呼びつけて口頭で説明(回答とも言わなかった気がする)するのが通例であった。そのうち根負けして、こちらも文書を求めることもしなくなってしまったから、相手の術中にはまってしまったわけである。

 さて、上の回答であるが、ご覧いただくとおり、苦しい言い訳というか、まあ、回答になっていない。この制度について「退職金を受け取るか否かによって負担金の額を増減することは想定しておりません」といっているが、この制度は、「受け取るか否か」なぞではなく、100パーセント受け取ることを前提に出来上がっている仕組みなのである。であればこそ、われわれは「どうなさるおつもりか?」と尋ねている。(結局のところ、どうするかは答えていない。)
 市長相当分は事務組合でプール計算されるから払い込んでおいても無駄(損失)になることはない、といっているが、そんなことはない。いまは明かさないでおくが、本当に受け取らない気なら事務組合の規約に則して分担金の支払いをストップする方法があるからである。払わなくてもいい方法があるのに漫然と払い込みを続けるのは無駄というものである。

 ともかく、この回答を受けて、次の定例会でわれわれオンブズ小矢部としての対応を話し合うことになる。
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by sumiyakist | 2007-07-21 09:29 | 知事退職金

上告理由書

 前知事退職金訴訟の上告理由書を青島弁護士が書いて提出してくれた。いささか長くなるが、(「第1 事案の概要」は省略して)その全文を以下に載せる。
  もちろん、中心は「第3 上告受理申立理由」にある。   
                                                                *
第2 原判決の要旨
  原判決は,以下のように,申立人らの主張を排斥し,本件条例15条中の知事の退職手当額に関する部分が法204条3項に違反するものということはできず,他の給与条例主義を定める法の規定に違反するということもできないとした。

1 本件条例15条の法204条3項違反の点
  申立人らは,本件条例15条が法204条3項及び204条の2の規定に違反すると主張した。
  これに対し原判決は,法204条及び204条の2は,あいまって,給与条例主義を定めており,その趣旨は,①住民の代表である議会の条例制定を通じて,給与体系を公明化し,給与等の額等を民主的にコントロールするとともに,②勤労者である職員に対し,勤労者の団体行動権の一部を制限する代償として給与等を権利として保障することにあると解し,本件条例は,条例から特別職に対する退職手当の額を確定できないので法204条3項の文言に適合しない面があることは否定できないが,特別職に対する退職手当の額の決定方法を明示しており,議会が条例を制定する場合と議決事項とした場合の議決方法には特段の相違がないことを考慮すると,両者は実質的には等しいということができ,上記給与条例主義の趣旨①をみたし,趣旨②はそもそも知事には当てはまらないから,本件条例15条が,知事の退職手当の額を直接定めることなく,議会の議決により定めることができるとする部分は,法204条3項に反するものとは解されないとする。
 
2 住民による民主的統制に関する差違について
  また,原判決は,申立人らの,住民による民主的統制の観点からの主張に対して次のように判断して理由がないと排斥した。
(1)条例改廃請求権による内容修正の可能性について
  申立人らは,法204条3項及び204条の2の規定の趣旨は,義会による民主的統制のみではなく,条例改廃請求権の行使等による住民の自治体に対する民主的統制の可能性を確保するところにもあるとして,本件条例15条は,法204条3項及び204条の2の規定の趣旨に反する旨主張した。
  これに対して原判決は,条例による場合は,公布されて退職手当の額が住民に了知され得る状態に置かれ,住民の条例改廃請求(法74条)により,その内容を修正する余地があるのに対し,議会の議決による場合には,議案提出前の段階では議案の内容たる退職手当の額を住民が了知することはできないとしながら,議員は住民の選挙により選出された住民の代表者であるから,民主的なコントロールのもとで退職手当の額を決定しているものといえるので,この差異をもって,条例により定める場合の方が,より民主的なコントロールが及ぶものとまではいいきれないから,このような相違をもって,本件条例15条が前記給与条例主義の趣旨①を没却するものということはできない(6頁12行目以下),仮に,住民の条例改廃請求権の行使等を重視するとしても,住民は,議会の議決する額とすることができるという本件条例に対しても,条例改廃請求を行うなどしてその意思を反映させることができたから,申立人らの主張は理由がないとする。
(2)選挙の争点化による内容修正の可能性について
  また,申立人らは,条例によれば,場合によっては議員選挙の争点となって選挙結果に基づき議会によって内容の修正が行われる可能性があるが,議決によればこのような可能性はないという点に差異があり,住民によるコントロールの観点からはこの差違は重要であるから,法が各種の直接民主主義的な制度を規定している趣旨を考慮すれば,議会の議決と条例とを同視することは,法204条3項及び204条の2の規定の趣旨に反するとともに,地方自治の本旨(憲法92条)にも反する旨主張した。
  これに対して原判決は,①住民は本件条例に対しても条例改廃請求を行うなどしてその意思を反映させることができた,また,②議決による場合には,議案が議会に提出される前の段階でその議案の内容(退職手当の額)を住民が了知することはできないが,一方,個々の退職手当の支給ごとに金額を議会で議決することは,予め条例で定められた金額が自動的に支給されるのに比べ,より住民の関心を惹きやすい面もあり,仮にその金額が不当であれば,住民が議員に働きかけたり,あるいは事後の議員選挙においてその点が争点となる可能性もあるから,議会の議決によることが,条例による決定に比較して,住民によるコントロールの観点から直ちに劣るものと断定することはできず,控訴人らの上記主張は採用できないとする。

3 執行機関と議決機関の抑制・均衡に関する主張について
  申立人らは,法204条3項及び204条の2は,少なくとも知事の場合には,議会と対抗関係にある知事の給与等がその都度の議会の議決によって決せられることはないことを定めることによって,執行機関と議決機関との抑制と均衡関係を図るという統治的意義をも有するものであり,本件条例15条はこれに反する旨主張した。これに対して,原判決は,本件条例15条により議会が議決によって知事に対する退職手当の額を定める場合と,その額の算定方式を条例で定める場合とを比較しても,前者が後者に比して,議会の権限が過大となり,知事と議会との抑制・均衡関係が崩れるとまでいうことはできないから,この主張も理由がないとする。ただし,この点については特に根拠,理由は示されていない。
  また,申立人らは,本件条例によれば,議会は自由に知事の退職手当の金額を定めることができることになり,議会に対する知事の対応に影響を与え,知事と議会との抑制・均衡関係を崩すものである旨主張したことに対して,原判決は,本件退職手当の額は,有識者らによる富山県特別職退職手当検討懇話会において,中沖の知事としての功績,昨今の経済状況,知事の退職手当の額の算定に関する全国的な状況や富山県における従前の知事の退職手当の額の算定方法等も勘案した意見がまとめられ,これを受けて議会により議決され,このような諸条件を考慮しないまま金額を定めたというようなものではないことを考慮すれば,議会が本件退職手当の金額を議決により定めることができるからといって,直ちに,知事の立場が弱体化して,知事と議会との抑制・均衡関係を崩すことになるとまでいうことはできないとして,申立人らのこの主張も採用できないとした。

第3 上告受理申立理由
  原判決は,以下のとおり,法204条3項及び204条の2の解釈に関する重要な事項についての判断を誤っている。
1 法204条3項及び204条の2違反の点について
  原判決が,特別職に対する退職手当の額の決定方法を明示していること及び議会が条例を制定する場合と議決事項とした場合の議決方法との間には特段の相違がないことから,両者が実質的には等しいとして,議決による方法は,法204条3項及び204条の2の規定の趣旨をみたし,本件条例15条が,知事の退職手当の額を直接定めることなく,議会の議決により定めることができるとする部分について,この判断は,法204条3項の明文に反し,また,同条が住民自治と団体自治を制度的に保障している憲法92条及びその趣旨をふまえて間接民主制の制度とともに直接民主制の制度をも取り入れて規定している地方自治法の趣旨から,許されない解釈である。
  このことは,甲2号証の晴山意見書に,立法経過,行政実例,学説及び判例をふまえて示されているとおりである。

2 住民による民主的統制に関する差違について
  さらに,原判決の,住民による民主的統制の観点からの申立人らの主張に関する判断は,以下の通り,不合理・非論理的であるとともに,憲法92条及びその趣旨をふまえて間接民主制の制度とともに直接民主制の制度をも取り入れて規定している地方自治法全体の整合的な解釈から許されない解釈である。
(1)条例改廃請求権による内容修正の可能性についての判断の誤り
  原判決は,条例改廃請求権による内容修正の可能性に関する差違は,議決による場合でも,議員が選挙によって選出された住民の代表者であるから,民主的なコントロールのもとで退職手当の額を決定しているものといえるので,この差異をもって,条例により定める場合の方が,より民主的なコントロールが及ぶものとまではいいきれないから,このような相違をもって,本件条例15条が前記給与条例主義の趣旨①を没却するものということはできないとする。
  しかし,確かに議員が議決で決める場合も民主的なコントロールのもとでの決定であると言うことはできるが,条例改廃請求の制度は,住民が直接条例について改廃を請求するという影響力を行使することが法的に保障されている制度であるから,これが認められる場合と認められない場合では住民の地方自治に対する影響力という点で決定的な差違があり,この差違は憲法92条に規定する「地方自治の本旨」をふまえ,直接民主制と間接民主制の両制度を取り入れている地方自治法の解釈において無視することは許されない。また,原判決は「より民主的なコントロールが及ぶ」という観点で判断しているが,異なる制度である直接民主制と間接民主制を比較して,「より民主的」であるか否かを論ずることはできず,このような考慮は失当であり,無意味である。むしろ,原判決の判断とは逆に,地方自治法が住民に保障している権利である条例改廃請求権の対象となるか,ならないか,という差違の重要性,意義を考慮して判断されなければならないのである。原判決のこの点についての判断は不合理・非論理的であり,誤っている。
  なお,原判決は,本件条例に対して条例改廃請求を行うことが可能であったとし,住民の条例改廃請求権の行使等を重視しても申立人らの主張は理由がないとしている。しかし,本件条例に対する条例改廃請求の可否の問題は,知事の退職金額を決定することに対して住民が条例改廃請求権を行使して変更を求めることが出来るか否かという差違とは全く関係がないことがらである。原判決のこの判断は非論理的であり,失当であるというほかない。
(2)選挙の争点化による内容修正の可能性についての判断の誤り
  原判決のこの点に関する判断のうち,本件条例自体が住民の改廃請求の対象となることと本件の争点とは全く無関係であることは上記(1)のとおりである。
  次に,個々の退職手当の支給ごとに金額を議会で議決する場合が,予め条例で定められた金額が自動的に支給される場合に比べ,より住民の関心を惹きやすい面があるとする判断については,いずれの場合であれ,住民が関心を有するのは退職金額の多寡,業績や世間相場の比較における金額の相当性であるから,必ずしもそのようには言えず,失当である。
  そして,個々の退職手当の支給ごとに金額を議会で議決する場合でも金額が不当であれば,住民が議員に働きかけたり,あるいは事後の議員選挙においてその点が争点となる可能性もあるから,議会の議決によることが,条例による決定に比較して,住民によるコントロールの観点から直ちに劣るものと断定することはできないとの判断については,条例改廃請求権の対象である場合には法定の条件を備えれば当該条例が改廃される保障があるのに対して,議員に働きかけることは単なる要請に過ぎず内容が変更される保障は全くなく,事後の議員選挙においてその点が争点になっても,支給後であれば無意味であるから,条例改廃請求権の対象となる場合に比べて,住民によるコントロールの観点から格段の差が認められ,これを直ちに劣るものと断定することができないとする原判決の判断は不合理・非論理的である。

3 執行機関と議決機関の抑制・均衡に関する判断の誤り
  まず,議会が議決によって額を定める場合と,その額の算定方式を条例で定める場合とを比較しても,前者が後者に比して,議会の権限が過大となり,知事と議会との抑制・均衡関係が崩れるとまでいうことはできないとする判断については,そもそも根拠,理由が示されていない。しかし,額の算定方式が定められている場合には,知事は退任前に支給額を知ることが出来,これを知りつつ知事に就任した場合には,退職金額は知事と議会の力関係に何の影響も与えないことは明らかであるが,知事の就任中に退職金額が決められておらず,退任後に議会の議決で金額が定められる場合には,退職金を確保するために議会の意向を損ねがたいとの意思が知事に働くことは明らかであり,このことが知事と議会の抑制・均衡関係に重大な影響を与えると認められる。法204条3項及び204条の2は,そのような関係も念頭に置いて規定されていると見られる。仮にそのようなことが念頭に置かれていなくとも,現実にそのような影響を与えるものと認められ,このような重大な影響は知事と議会の抑制・均衡関係において許されるべきではないから,原判決のこの点についての判断は失当である。
  次に,本件において各種条件を考慮して金額が定められたことを考慮すれば,議会が本件退職手当の金額を議決により定めることができるからといって,直ちに,知事の立場が弱体化して,知事と議会との抑制・均衡関係を崩すことになるとまでいうことはできないとした判断について,本件では知事が退職した後に退職金額が決定されており,判決の指摘する各種条件は知事が退職した後に検討されており,知事が退職するまでの間は,全くこのような検討が行われておらず,将来行われる保障もなかった。したがって,知事の立場を弱体化しないとする根拠にはなり得ない。原判決のこの判断は,時間の先後関係を無視した非論理的な判断である。

4 以上の通り,申立人らの主張を退けた原判決の判断は,不合理・非論理的であり,憲法92条及びこれを受けて制定された地方自治法の趣旨と同法が有する各種制度体系に反するものであり,これを維持することは国民の司法に対する信頼を著しく裏切ることになるので,変更されなければ,著しく正義に反する。
  
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by sumiyakist | 2007-06-22 19:07 | 知事退職金

小矢部でも報告会

c0068917_22522754.jpg  20日夜、小矢部市でも前知事退職金裁判にかんする報告会を行った。青島弁護士も来てくれて、内容は富山でおこなったことをほぼそのまま踏襲した。会場が和室ということで、くつろいだ感じで話し合いが出来た。川崎磯信氏も富山での会に続いて聴衆として参加し、例によっていささか挑発的な議論を展開する場面もあって初対面のひとは驚いたかもしれない。
 また、警察のでっち上げによるえん罪として世間の注目を浴びている氷見氏の男性の事件の再審が地裁高岡支部で開かれたこともあって、警察や司法の問題点などに話は広がって止まるところなしであった。
 写真中央が法律的な論点を解説する青島弁護士。
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by sumiyakist | 2007-06-21 22:57 | 知事退職金

小矢部市長に公開質問状

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 去る6月18日、市民オンブズ小矢部として市長に公開質問状を手渡した。上が翌日の北日本新聞の記事であり、事情をほぼ正確に伝えている。

 現市長の桜井森夫氏は昨年秋の市長選挙において、引退した大家敬一・前市長後継の対立候補を破って当選を果たしたのであるが、選挙の公約のひとつに「市長退職金を辞退する」を掲げていた。(このこと自体がわれわれオンブズ運動の「成果」、少なくとも運動が影響を及ぼしていたと、考えられる。)そして、めでたく当選を果たし、その後の議会の質問にたいしても、その旨を明言してきた。

 ところで県内の比較的小さな市町村では、職員の退職金支払いに備えて「総合事務組合」という名の一部事務組合を作って積立金をプールして共同で対応する仕組みをとっている。それに基づいて、毎月、一般職・特別職とも、全職員の給与の一定割合を負担金として事務組合に納入することになっているのである。(誤解されないように付け加えておくが、この負担金は職員の給与から天引きされているわけではなく、自治体の財政から持ち出されている。)

 桜井市長が退職金を受け取らないという以上、氏が昨年11月に就任して以降は、市長退職金については積み立て(負担金)は納入する必要はないはずである。しかるに、情報公開でその負担金の納入状況を調べてみると、前市長の時と変わらず月額報酬の1000分の340分を事務組合に納入していることが判明した。

 オンブズ小矢部の定例会で、このことについて、まず市長の考えを問いただすことが必要であろうということになり、上のような「公開質問状」となったのである。

 想像するに、桜井市長は公約を反故(ほご)にする気はないものの、あまり深く考えてはおらず、いったん受け取ってどこかの公共的な団体とか財団に寄付すればいいだろうくらいに考えているようであった。

 しかし、じつは自治体首長の退職金の辞退というのはそれほど簡単なことではない。いったん受け取ってしまえば、その後に自治体へ返納したりどこかへ寄付したりすると、政治資金規正法の寄付行為に当たることになり、多くの場合重大な法律違反になる。もっとも正当な方法は条例を改正して自分の退職金を支払わないことに決めることなのであるが、これまた多くの場合、なぜか議会はその条例案に反対するから頓挫する。(それを見越して条例改正案を提案して否決させるという「高等戦術」をとる首長もいるようだ。)

 さらに、わが小矢部市の場合は、市だけの単独の仕組みではなく、県内の多くの市町村が加入する事務組合の規約で決められているから、小矢部市だけが勝手に市長退職金を廃止するわけにはいかないと思われる。

 そういうわけで、退職金辞退という公約の実行にはそれなりの裏付けが必要なのである。それをしないで積立金(負担金)を納入し続けるというのは、受け取らないはずの退職金の積み立てをすることであり、不要かつ不当な支出に当たるのではないか、というのがわれわれの考え方である。
                                                            *
 新聞記事掲載のついでにもうひとつ北日本新聞の記事(6月15日)を載せておこう。自民党の行政改革推進本部でも自治体首長の退職金が高すぎるとの批判が出てその対策を検討しているという記事である。
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by sumiyakist | 2007-06-20 23:47 | 知事退職金

小矢部でも報告会

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「前富山県知事退職金返還請求訴訟」(ああ、長い!)が最高裁に舞台が移ったのを機会に、過日、富山市で総集編のような報告会を開いたのであるが、地元小矢部の市民にも知ってもらったほうがいいだろうということで、上のようなチラシでPRを始めた。
 代理人の青島弁護士も来て話をしてくれることになっている。小矢部に限らず、近隣の方も是非お越しください。(要点を下記に再掲)。
                                                             *
日時:2007年6月20日(水) 午後7時より(9時頃までの予定)
場所:石動コミュニティセンター(旧北電支店)

地図
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参加費は無料ですが資料代のカンパは歓迎。(詳細・濃密な資料です。)
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by sumiyakist | 2007-06-06 19:58 | 知事退職金

報告会

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c0068917_23141341.jpg 昨4月19日夜、富山市内で「前知事退職金返還訴訟報告会」を開いた。PRに十分な力を割けなかったこともあって、参加者は20人程度と、やや寂しい感もあったが、48ページの詳しい資料も作って、準備にはかなり手間をかけた。

 私の経過報告、石山氏の実感的オンブズ裁判報告、青島弁護士の論点解説と晴山意見書の説明などを話した後、参加者と話し合いを行った。(写真上は報告をする石山氏、下は資料)

 時系列に沿って全体を通観することで、参加者には問題点をよく理解してもらったようであるし、われわれも頭を整理するいい機会であった。

 最高裁でどういう判断が出されるのか(つまり、いったい、われわれに勝機があるのかどうか)ということが参加者の質問の一つの焦点であった。
 この点について青島弁護士は次のように話した。
 「最初から、われわれが勝つ可能性があるとすれば最高裁においてであろうということは原告やオンブズのみなさんにもそう言ってきた。つまり、現在の地裁や高裁は非常に行政に迎合的であって、まともな議論ができない。かつて市民オンブズ富山で、やはり住民監査請求から裁判に入っていった上水道談合訴訟においても、誰が見ても正当な、まったく教科書的な訴訟を提起したにもかかわらず、一審二審においては全く認めようとしなかった。しかし、最高裁では勝った。さすがに最高裁では、あまりにひどい判決を出すと国民の司法に対する信頼が損なわれるので、世間に知られたら困るようなひどいもの(下級審の判決)は直さざるを得ない。で、この知事退職金の問題がそれにあたるかどうかは、そのギリギリのところにあるように思う。学者が論文を書いたり学会で注目されたり、あるいは市民が関心をもって見つめていたりしていると、こっそり判決を書いて済ませてしまうわけにいかなくなるので、今後の運動の進め方も大切だとおもう。」
 
 さて、当日の資料の付録に富山空港ターミナルビル(株)のHPの1ページを載せておいた。
 下の方の常勤役員のところをご覧いただきたい。中沖豊氏がいまも代表取締役会長・社長を務めている。報酬もしっかり貰っているようだ。そもそもこの役職は、各種の財団理事長とか公的組合のトップなどと同じように、富山県知事のいわゆる「宛て職」のようなもので、氏が知事在職中は無給で務めていたという。ということからすると、知事を退職したならこれも辞任して後任の知事に替わるべきものだと思うが、この椅子だけ(他にもあるとの未確認情報もあるが)はしっかり確保して、ちゃっかり報酬も取っているというのは、いささか未練がましい、「美しくない」行為だと思うがどうだろう。
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by sumiyakist | 2007-04-20 23:21 | 知事退職金