介護保険
2008年 09月 25日
先日(9/21)富山市で開かれた講演とシンポジウムを聞きに行く。認知症の人と家族の会(かつて「ボケ老人をかかえる家族の会」といっていた)が開いたもの。来年行われる介護保険の制度改定に向けての「提言」をアピールするために全国4カ所で開いてきたもので富山市が最後だという。
最初に津止正敏・立命館大学教授の基調講演「『介護の社会化』とはなにか」があり、会が出した「提言」の解説につづいてシンポジウムが行われた。(上の写真はシンポジウムの場面)
介護保険が実施されたのは2000年。「介護の社会化」「家族による介護から社会全体での介護」を最大のスローガンに導入された。確かに高齢者介護に対する「意識改革」にはなった。ホームヘルプやデイサービス・ショートステイなどの利用が急速に一般化し、老人ホームは「救貧的」なものから普通の家庭の高齢者が利用するものへと変化した。それにともなって施設の設備や介護技術の水準も上がった。
特養ホームは「個室・ユニットケア」が普通になった。しかし、そのぶん、利用者の負担は急上昇し、老齢年金などではまかないきれないことになり、施設は「高嶺の花」化しつつある。施設を出されて行き場のない「介護難民」も生じている。
3年ごとに見直し改訂が行われてきているが、そのたびに介護報酬は切り下げられ、そのことは介護職の給与削減に直結している。介護に意欲的な若者がせっかく就職しても、給与や勤務形態などの労働条件の悪さにすぐ辞めてしまうという。3K職場(きつい、きたない、結婚できない)という自嘲も聞く。
私の友人たちにも何人か小規模な福祉施設(いわゆる富山型のデイサービス施設など)を経営しているが、みな、苦労している。自分も含めて職員の給与は、ボランティア精神で補わなければならない金額だ。介護の現場は、そういういわば使命感と自己犠牲とを「足し前」してようやく維持されている。(営利優先の大型施設の状況を聞くこともあるが、それはまさに「収容所」であり、利用者は悲惨な状態にある。そうでもしなければ「利益」が生み出せないのだ。)
さて、上の津止教授の講演は、もう少し違った視点からなかなかに啓発的な内容であった。
・要介護者の80パーセント以上が在宅で、家族とあるいはひとりで暮らしていること。
・男性の介護者(介護する側が男性、つまり夫とか息子)が増加していること。それと関連して仕事と介護の両立という新たな問題が生じていること。
・介護者にとって、介護の負担を感じることと介護に喜びを感じることとが、アンビバレントに両立していること
などを指摘して、介護政策への提案を行っていた。
後半のシンポジウムも、パネラーに知った顔もあったり、厚労省の担当官も出ていたりで、興味深い発言が多く、学ぶことが多かった。主催者が用意した資料が足りなくなって慌てて追加をコピーするほどの盛況だった。
by sumiyakist
| 2008-09-25 13:37
| 地方自治