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弁護士より医者をふやすべきだ

 医者と弁護士というと社会的なステータスの高い(しかも収入も多いから)、人気のある職業であるのは誰しも認めるだろう。いずれも難関の試験をパスする必要がある。私は、とりわけ医師の養成制度には問題があると思うが、いまその制度的な問題自体を論じるつもりはない。
 ふつうの感覚でいって、わが国には医者が不足していると思うことはあっても、弁護士が足りないとは感じられない。にもかかわらず、政府は、弁護士をどんどん増やし、医者の数は抑制しようとしている。
 人口あたりの医師数はOECD加盟先進国の中でわが国は最低であり、日本は人口1000人当たり2人ほどであるのに対してOECD加盟国の平均は3人である。つまり、諸外国は人口比あたり日本の1.5倍の医師がいることになる。OECD平均に追いつくには、あと12万人不足しているそうだ。しかし、厚労省は国民医療費総額を抑え込みたいために医師の養成をかなり抑制している。その現状については、たとえば、現役医師のブログ「健康、病気なし、医者いらず」にも詳しく述べられている。

 一方弁護士についてはどうだろうか。
 司法制度改革のひとつに法科大学院があり、この制度によって、これまでは年間500人程度であった司法試験合格者を3000人に増やそうというのである。別段国民が弁護士不足を感じていないのにその数を急増させようというのだから、だれがみてもこの裏には何かわけがありそうだ。
 わが国の弁護士はおよそ2万人、人口が2倍程度のアメリカには100万人。アメリカが訴訟社会であるのはよく知られている。なにかというとすぐに弁護士が駆けつけてきて裁判に訴えるように勧めるらしい。
 そのアメリカが、わが国に対する「改革」を要求している「年次改革要望書」の一項目にに司法制度改革もあって、その具体的な内容のひとつに外国人弁護士が日本で仕事をしやすい環境づくりを求めている。(日本の法律の外国語翻訳を進めさせるといったこともある。)
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「要するに米国は日本に訴訟を『輸出』しようと狙っているのだ。国内での商機縮小を見越した米国の弁護士たちが、出稼ぎ先を探して世界を見回したとき、世界第二の経済大国でありながら訴訟が極端に少ない日本は、まさにかっこうの標的なのである。」(『奪われる日本』関岡英之)                                                         *
 アメリカ大統領選挙は、クリントンにしろ、オバマにしろ、あるいはエドワーズにしろ(3人ともやり手の弁護士だ!)、民主党がとるだろう。
 ブッシュよりはリベラルであることは喜ばしいようであるが、民主党は元来、日本に対する強硬な姿勢を保っている政党である。「(アメリカに有利な)改革」に対する外圧はいっそう強まることは間違いない。

 ついでにいうと、看護師や介護士についても、国内の有資格者や現場職員の待遇を切り下げて人材の職場離脱を進めておきながら、フィリピンなど発展途上国から(職業上は大きな障壁になる言語の問題などおかまいなしに)「輸入」しようとしている。看護や介護の現場の給与や勤務態勢を改善すれば国内で潜在している供給を相当まかなえるはずである。
 看護や介護の職業に対する意欲を持って職場に入った若い人たちが数ヶ月、数年で失望して職場から去るという事例には事欠かない。その最大の理由は給与や勤務時間などの労働条件であろう。
 こういう点でもわが国は逆転している。日本の政治家や官僚はいったい何を考えているのかと思わざるを得ないし、しかも多くの場合、その裏にはアメリカの影が見え隠れするのである。
by sumiyakist | 2008-01-07 21:59 | 裁判批判

山で暮らしながら下界に関わる日々


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