反論(第1準備書面)

 控訴審でのわれわれ側の主張である控訴状への補充と、相手側(県側)が出してきた反論(答弁書)に対する反論を含めて、公判当日に第1準備書面として提出した。青島弁護士が書いてくれたものである。(これに対する再反論を県側がしないということで、公判は結審したわけである。)
 その主要部を掲載する。論点を掲げるのに判決文などの当該箇所を記号だけで示しているのでやや分かりにくいかもしれないが、お許しを願う。
                 *

第1 控訴理由の補充−原判決の問題点
1 第3,1,(2),イ項及び(3)について
  原判決は,「昨今の経済状況等をもある程度考慮した額であるということができ,これをもって社会通念上許容しうる限度を超えて著しく不当に高額であるとは,にわかに断定することはできない」と判断している。そして,その前提事実として第3,1,(2),ア,(イ)で富山県特別職退職手当検討委員会での意見が上げられており,この委員会での検討内容及び意見の内容を知ることができる証拠は乙2号証及び同3号証のみである。
  ところで,知事の退職手当の額の相当性を検討するには,支給時の経済状況や全他の都道府県及び富山県の歴代の知事に対する支給状況も重要な要素であるが,何よりも当該知事の在任中の実績,県政への功罪が,それと同等又はそれ以上に重要な要素であることは言うまでもないものであるところ,上記意見や証拠から見られる検討内容の中には他都道府県における知事在任中の財政状況の変動はもとより,富山県における知事在任中の財政状況の変動も全く含まれておらず,退職手当額を定める上で最も重要な要素が全く踏まえられないで決定されたことが認められる。
  この点についての中沖知事は,その在任中に県の借金と言える県債残高を8000億円も増やし,単年度でも400億円の赤字財政という状況に富山県を陥らせたものであり,通常の民間の場合には私財の投入が求められるような結果を残したものである。
  したがって,このような状況を検討すれば,判決の判断とは逆に「社会通念上許容しうる限度を超えて著しく不当に高額であると」容易に断定することが出来たものであり,原判決の上記判断は失当であり,これを前提とする(3)の判断も同様に失当である。

2 第3,1,(4)について
  原判決は,「住民は,議会の議決する額とすることができるという本件条例に対しても,条例改廃請求を行うなどしてその意思を反映させることができたものというべきである」として,住民の自治体に対する民主的統制の確保に関しての給与条例主義違反の控訴人らの主張は理由がないとする。
  たしかに,住民は本件条例に対して意思反映の機会はあったことは認められる。
  しかし,住民の権利の保障という観点から見れば,本件条例の不備に対する住民の意思と,その条例によって議会の議決で定められた退職手当の額に対する住民の意思とは別のものであり,前者の表明の機会が認められるからと言って後者の表明の機会を認められなくてよいという関係にはない。
  また,現実的な住民の権利行使の容易性という観点では,議会で妥当な金額が決定されれば住民としては条例の不備という抽象的な点に対して特段の意思を持つ者は多くないと見られるのに対して,不当な額が決定されれば,金額に対しても,また,そのような結果をもたらした条例に対しても問題を感じる者が多くなると見られる。この違いは現実的な住民の権利行使の点では重大である。
  したがって,原判決の,住民の自治体に対する民主的統制の確保に関しては問題がないとして控訴人の主張を理由がないとした上記判断は,これらの点に対する考慮を欠き,失当である。

第2 被控訴人の答弁書における主張に対する反論
1 答弁書第2,2項(4)について
  被控訴人は,住民は本件支出当時の富山県職員退職手当支給条例では具体的な額を知ることは容易ではないとの前提で主張している。
  しかし,一般職員の場合は格別,知事の場合は,その給与については新聞で報道される等して公開されており,条例で支給率が定められていればこれを乗じて容易に金額を予測することができるのであり,被控訴人の主張は前提を誤っており失当である。
  また,住民の条例改廃請求権の行使は,住民の一定割合の署名の収集が必要であり,このため準備期間及び収集期間が必要となるため,現実にこの権利を行使するには具体的な退職金額が決められ,住民がこれを知ることができるようになってから相当期間が必要となり,事前に支給率が定められている場合と比べ議会の議決で金額が定められ他本件処分の場合には,その権利行使に格別の困難の度が増す。
  さらに,被控訴人は議会の議員への働きかけを云々するが,その本質は単なる要請に過ぎず,条例改廃請求権の行使と同列に扱うことはできないし,住民側の手段が奪われること自体も問題である。
  また,次回選挙への反映を主張する点については,支給後のことで,後の祭りであり,さらに効果が少ない。

2 答弁書第2,2項(5)について
被控訴人は,具体的な退職金額が決まった後議決の当否が選挙の争点になる可能性と算定方法だけを決めた条例の適否が選挙の争点になる場合を比較して主張をしている。
  しかし,知事は任期切れが近づいて再度立候補することがあり,退職するかどうかが決まるのは通常任期切れ近くになってからとなり,本件処分のように具体的な退職金額が決まるのは支給直前となることが多い。また,知事側としては高額な金額とする場合には選挙の争点となることを避けたり,決定と支給との間に選挙を挟んだり,時間を置くことを避けることが容易である。したがって,具体的な退職金額を選挙の争点とすることを容易に避けうるので,被控訴人の主張は希有な事態を前提としたものとなる。
  また,算定方法を定める場合には,いつでもそれ以後の県政のために改廃請求の機会があるのに対して,金額で定める場合では常に不相当の金額が決められるとは限らないため,必ずしも問題点が顕在化するとは限らず,退職金額に対する住民のコントロールの観点からすると,そもそも同一のものとして比較すること自体が失当である。以上
[PR]
by sumiyakist | 2007-02-14 22:27 | 知事退職金


<< 行政訴訟をする意味 市長申し入れ >>