お粗末判決

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 8月2日(水)午後1時10分、待ちに待った(笑)富山地裁判決である。原告3人に、市民オンブズ小矢部の他のメンバーも2人加わって地裁まで出かける。
 判決は主文だけを読み上げるまことにあっけないもので、その間わずか30秒もかからないほど。佐藤真弘裁判長が読み上げたのは、

 「主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。」

とまあ、これだけ。
 この段階では判決理由は分からないからなんともいいようがない。(請求棄却は十分 
予想できた判決であり、その理由がどういうものであるかが重要だとわれわれは考えていた。)さっそく書記官室で判決文をもらって検討することにする。

 じつは、今日は代理人の青島弁護士が所用で遠方に出張中なので、法律事務所の一室を借りてわれわれと支援者だけでざっと判決文を読んで、マスコミとの会見に出ることにした。(上の写真がその時のもの。左側がわれわれ原告たち、右と手前が記者たち。)





 判決文の主要部は後でページアップするつもりであるが、ひとことで言って「お粗末」である。

 争点は、ここでも何度も取り上げてきたように(そして、晴山教授の意見書もひたすらその点を解明していたように)、中沖前知事の退職金を支給するに際して、富山県職員退職手当条例15条にもとづいて議会の議決によることが、地方自治法204条にいう給与条例主義に適合しているか否か、ということに尽きる。
 判決はその主要部である「第3 当裁判所の判断」の冒頭において、そのことを「(争点1)」として取り上げてはいる。したがって、問題の核心はここにあることを認識してはいるのである。
 しかしながら判決は、この争点の内容をすこしずつずらしてゆく。つまり、給与条例主義の趣旨が、①職員に対して給与を権利として保障すること。②給与の決定を住民の代表たる議会による条例制定を通じて民主的にコントロールすること。と置き換え、

「本件条例15条は,議会がその議決により知事に対する退職手当の額を定めることによつて,その額の決定について,直接議会のコントロールを及ばすものであり,しかも,議会が条例を制定する場合の議決方法と条例で議会の議決事項とした場合の議決方法に区別がないことからすれば,実質的には給与条例主義の上記趣旨に直ちに反するものということはできない。」(判決文)というのである。

 つまり、条例も議会の過半数の賛成で成立する(同じ議決方法による)のだから、単独の議決も効力は条例と同じだ、というのである。ここにある「直ちに反するものということはできない」という語にご注意いただきたい。いわば、「完璧とは言えないけれどもまあ、6,7割の妥当性はある」という意味であろう。

 そうしておいて、次に、

「もっとも,条例については,条例が公布されることにより,退職手当の額が住民に了知され得る状態に置かれ住民の条例改廃請求(法74条)により,その内容を修正する余地があるのに対し,議会の議決による場合には,議案が議会に提出される前の段階でその議案の内容(退職手当の額)を住民が了知することはできないことになる。」(判決文)

と、一応は議決と条例の差異を無視するのではないとことさら念押しした上で、

「しかし,議会の議員は住民の選挙により選出された住民の代表者であることからすれば,民主的なコントロールのもとで退職手当の額を決定しているものといえるのであって,上記差異をもって,条例により定める場合の方が,議会の議決による場合より民主的なコントロールが及ぶものとまではいいきれない.したがって,本件条例15条は給与条例主義の趣旨を没却するものではない。」

 議決によるからといって、民主的なコントロールという点では条例に劣る「とまではいいきれない」と述べている。つまり、ここにおいても、完璧ではないが、まあ6,7割の妥当性はある、というわけである。(ちなみに、こういう曖昧な表現で条例と議決の境界をわざとぼかすことは、裁判所としては、法の命ともいうべき「法治主義」に関して、致命的なごまかしをしていることである。そこまでして行政を庇う意志を示したということである。司法の劣化の一証左というべきであろう。)

 ともかく、こうして判決は、給与条例主義に対して「二重の値切り」を重ねて、県の決定を救済するのである。本来なら、7掛けの7掛けなら49パーセントの妥当性しかないことになるのであるが、第一の関門を7掛けで通り、第二のそれをまた7掛けで通れば、それで通過したことになるといっているようだ。

 そして、この問題を「争点1」として掲げたにしては脱兎のごとく通り過ぎておいて(その後には「争点2」も「争点3」も提示していない)、県が前知事の退職金の額を決定した手続きと内容についてつぶさに(県側の証拠=資料にもとづいて)述べ始めるのである。
 
 そんなことは、このブログでもいくつか挙げて論じた通り、われわれも情報公開で原資料を得て、十分承知しているのである。なぜか判決は詳細に決定に至る経過とその中身を丁寧に吟味している。そんな暇があったら「晴山意見書」の吟味をしっかりやったらどうか、それが唯一最大の「争点」(「1」しかない!)なのだから、とわれわれは言いたいところである。

 ともかく、その手続きと内容を検討して、

「本件退職手当の額を決定した手続,その内容等に鑑みても,社会通念上許容し得る限度を超えて著しく不当に高額とまではいえないから,結局,本件退職手当の支給が違法であるということはできない。」(判決文)

と結論づけるのである。

 お笑いなのは、最後に、われわれ(や晴山意見書)が、議決と条例の本質的差異として挙げた、条例なら改廃請求の対象になるし、選挙などで争点として争うことができるが、議決ではそれができない、と論じたことに対して、

「原告らが主張するとおり,住民の条例改廃請求権の行使等を重視するとしても,住民は,議会の議決する額とすることができるという本件条例に対しても,条例改廃請求を行うなどしてその意思を反映させることができたものというべきである。」(判決文)

と、お説教までたれているのである。そんなことはまさしく余計なお世話なのであって、裁判所は、提訴された「争点」のみに関して虚心に、法律と裁判官の良心にのみ基づいて判断すればいいのである。

 請求棄却はいわば「想定内」のことであり、今日の判決の検討においても控訴する方針は確認したが、青島弁護士とも相談し、来週には「市民オンブズ小矢部」の月例会もあるので、それらをふまえて今後の対応をすることになる。

今後も、いっそうのご支援をお願いするしだいである。
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by sumiyakist | 2006-08-02 23:32 | 知事退職金


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